【書籍】国家の栄枯をたどる-その1-
『国家はなぜ衰退するのか』
2015年、人生2回目の大学2年の夏休み。
僕は横浜市立大学の受験を考えている高校生向けの相談会に、相談役として参加していた。
相談役に名乗りでた理由は、
”横市二次試験の攻略本を出せるくらい、過去問を分析していた”
ので、勉強面で彼らのサポートをできるかなと考えたからだ。
僕はセンター試験後、この大学以外で受験を考えていなかった&センター試験結果が悲惨だったので、なんとしても二次試験で高得点をとる必要があった。
そのため、
”日本の全大学に不合格でも、横浜市大だけは合格できる。”
をテーマに受験勉強をしており、この経験がお役に立てるのではと、相談役に立候補した。
(サラリーマンを辞めて大学受験をした話はこちら)
で、相談会が始まるまでの間、他の学生と雑談しているとその中に経済学の教授がいた。
「経済学の先生と直接話す機会なんてそうそうないな。」
と思った僕は先生に話かけた。
会計学を専攻していること、歴史が好きで人文科学系の授業も履修していること。などなど。
僕:いま『銃・病原菌・鉄』という本を読んでいるのですが、西洋中心の世界が形成される過程を地理的な側面を切り口に考察している点が面白いです!
教授:それであれば『国家はなぜ衰退するのか』もおすすめだよ。国家の繁栄と衰退をまた違った角度から分析している。
僕:早速読んでみます!
これがこの本との出会い。
『国家はなぜ衰退するのか』
ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン著
500年前同じ文明にあった土地ノガレスは今、アメリカとメキシコという国境をまたぎ、北南で明らかな経済格差を生んでいる。その理由はなぜか。
という疑問が本書の原点となっている。
”世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか。”
この問いに対して著者は、
”長期的に経済発展する国家とそうでない国家の違いは政治経済制度の違いである。”
と主張している。
対して『銃・病原菌・鉄』
ジャレド・ダイヤモンド著
「あなたがた白人は多くのものを発展させて、ニューギニアに持ち込んだが、我々は自分たちのものといえるものがない。それはなぜだろうか。」
アメリカ人の著者が、ニューギニアの政治家にこう問いかけられたところから話が始まる。
”なぜ世界の富と権力が、(欧米中心に)不均衡な状態にあるのか。”
この問いに対し著者は、
”地理的に有利な状況にあった地域がその恩恵を受け、繁栄することができた。”
と主張している。
『銃・病原菌・鉄』はドイツ語の先生に勧められた書籍で、人類の歴史を地理的なを側面で検証してゆく内容はとても興味深かった。
(この書籍に関するブログはこちら)
kometame.hatenablog.com
『銃・病原菌・鉄』のおすす動画
社会科学の教授に勧められた書籍『国家はなぜ衰退するのか』。
人文科学の教授に勧められた書籍『銃・病原菌・鉄』。
2人の教授の専門と2書籍の主張が一致していて面白い。
世界の経済格差というテーマに対して、社会科学の教授は政治経済学を根拠とする書籍を、対して人文科学の教授は生態学を根拠とする書籍を紹介してくれた。
economyとecology。
双方に共通するテーマは、
”なぜ今世界の富は欧米に集中し、一方で依然として貧しい国家が存在するのか。”
ということ。
国家の繁栄と衰退には政治経済上の制度が大きく影響していると主張する『国家はなぜ衰退するのか』に対し、いやいや制度云々ではなくてあくまで地理的な環境が第一要因でしょうと主張する『銃・病原菌・鉄』。
なぜ今世界の富は欧米に集中しているのか、という問いは本当に考えさせられますよね。
特に我々日本人にとっては。
こんにちアジア諸国が目覚ましい経済成長を続ける中で、世界の富が欧米からアジアに移動しつつあるけど、それでも欧米諸国が引いたレールの上を走っている感は否めない。
そのレールは経済上の優位性にとどまらず、
”なぜ肌の色を白くしたがるのか、なぜ髪の毛を茶色に染めたがるのか、そしてなぜ欧米人を美しいと感じるのか”といった、アイデンティティの面にも深く影響している気がしますね。
では欧米諸国がいち早く国家の発展を成し遂げた理由を紐解いていきましょう!!
で、次編では『国家はなぜ衰退するのか』の内容を、『銃・病原菌・鉄』の具体的な主張と対比させながら解説して行こうと思います。
アメリカ、サンディエゴの国境より
上:アメリカ側
下:メキシコ側
【書籍】国家の栄枯をたどる-その2-はこちら